暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
陛下だけでなく、クレハや私の使用人であるサニー達、そして宮殿で働く皆に多くの迷惑をかけた。
私のこの勝手な正義感と余計に首をツッコむ癖がなければ、そもそも攫われる事もこのように今回の事件を起こさずにすんだはず。
私は…………何て事をしたのだろうか。
そう深い負い目を感じていたが、対する陛下は表情など一つも変わらずいつも通りで、
「理解しているのなら良い。そなたを思い通りに出来ないなんて事は余は初めから分かっておったし、あの件を頼んだ時から最低限行動の予想はしていた。………まぁ、クレハがついていれば問題ないと安心していたが……」
そう言ってチラッと後から来るクレハを見た。すると、クレハはビクッと身体を震わせ、
「も、申し訳ございませんでした」
陛下と私に頭を下げ、そう謝罪した。
「わ、私は………クレハの言葉を聞かず勝手な行動をしたのに、謝罪なんてそんな……っ!」
逆に私が謝罪しなければいけないところなのに。
とても申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「……アニーナ。そなたは先程、勝手な行動と言ったがそれは違うぞ」
「…………え?」
「そなたは知らぬだろうが買われ国を去った後、人身売買に手を染めていた輩は全員捕らえられ、商品とされていた女は無事皆保護された」
………………あの後、誰一人売られず無事だった……?
「それは……本当でございますか?」
「あぁ。それも無傷だったそうだ」
そう言って陛下は私をジッと見つめる。
何が言いたいのかその目で何となく分かった。
「"力"を使ったのだな」
陛下も無傷だと知って可笑しいと思ったのだろう。怪我も病気も何一つ症状もなく、長い間捕まっていたのに無傷だなんて普通は可笑しいもの。
一度私には人とは違う力があると陛下に申し上げたことがあったので、それでこういう事が出来るのは私だと思ったのだろう。
それか、その捕まった女の人達に聞いたのか………………どちらにせよ陛下はどう思ったのだろうか?
あの時は『気にする事はない』と言って下さったが、実際その力を目の当たりにしてしまって、不気味に思っただろうか。
「………………………………気味が悪い…ですか?」
震える声でそう陛下に聞く。
聞いておいて何だが、これで『気味が悪い』などと言われてしまったら私は………どうしよう。
どうしたら良いんだろうか………。どんな顔をすれば………。