暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
しかし…………………馬車も護衛をつけて下さったとは…。
そのような気遣いをされるなど思いもよらなかった。
「第一妻の地位も………ここを出るまでは剥奪しないでくださったのね」
どの側妻よりも上の立場で、アルヴァン様と過ごした日が他の者よりも多いと勘違いしたその地位……。
私(わたくし)が欲しかったのは……そんな権力や地位ではなくて、アルヴァン様の愛だったと言うのに…。
求めてはいけないと分かっていながら私(わたくし)はそれを求めてしまった。
ただ、私(わたくし)だけを見てほしい…………と。
____ギィ…………。
人専用のドアから外へ出て最初に目に飛び込んできた光景に私(わたくし)は思わず声が出た。
「あら…………!」
道中砂漠だった景色から一変、門の外は広い草原で所々にお花も見える穏やかな場所であった。
上を見上げればジリジリ…とこちらを照りつける太陽。
それを緩和させるかのように吹くそよ風が、私(わたくし)の髪を揺らす。
「何て………………外は穏やかな場所なのでしょう」
その光景につい見惚れてしまう。
今まであのハレムで第一妻として、ハレムの責任者として、気を張り詰めて過ごしていたから気づかなかったが、
外はこんなにも広くて………私(わたくし)が思うよりも自由だったのね。
「もっと………他の事に目を向けていれば……こうならずに済んだのかしら」
自分の行った行動に呆れてつい笑みが出たが、結局は醜い嫉妬で同じ事を起こしていたのかもしれない。
結果は………どんなに振り後悔しても同じだったのかも。
「……………そう。だからこそ与えられた"機会"か」
やってしまった事はどんなに足掻いても覆せは出来ないが、これから先反省をして、同じ過ちを侵さないようもう一度やり直す事は自分次第で出来る。
だから………スフィアは、アルヴァン様はこのような選択をしたのだわ。
「…………例え庶民になっても私(わたくし)には変わらないわ。これから先どう生活をしていくか取りあえず考えないと!」
一人で全ての作業を行うなんて事、生まれてからした事がなく少し不安であるのだが、何故か不思議とワクワクしている自分がいる。
何かが吹っ切れたような、目が覚めたような……………そんな感覚。
私(わたくし)は軽く髪をかき上げると、草原しか見えないその先へと歩き出した。