暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「お久しぶりです。お身体の方はいかがでしょうか?」
入ってきたのは腰まで伸びた艷やかで美しい黒髪の女性で、大きな青い瞳と潤った赤い唇。
そして物語で登場する、とあるお姫様のような透き通った白い肌。
声は確かに聞いたことがあるのに、どう見てもお会いしたことのないお方が目の前にいるので少しだけ動揺したが、着ている服装がこの国で暮らす側妻様の中で流行っている物だったので恐らく………………ここの側妻様なのかもしれないが。
「だいぶ良いです。薬も頂き、こうして自室で休んでおります」
私が覚えていないだけかもしれないと、取りあえず知っている風を装い当たり障りのない無難な言葉を選んだ。
「体調が回復され自室へと戻られたと聞いてはいましたが、こうして実際に元気になられた姿を確かめる事ができ、安心致しました」
「ご心配をおかけしましたようで、すいません」
……………そう。
無難な言葉を選んだつもりだったのだが。
「ところで、スフィア様。なぜ私に丁寧な口調でお話になるのですか?まさか……………………アルヴァン様からすでにお話があったのでしょうか?」
喋り方を指摘され、心臓がドキっと跳ね上がる。
私は普段このお方になぜか丁寧な言葉を使っていなかったようだ。
「えっと〜………………侍女の方から少しだけ話をお聞きしました」
恐らくこのお方が言いたいのはギャビンの言っていたあれだろう。
私とアニの無実が証明され、そして私を牢獄から助け出してくれた件についての話だ。
「無実を証明して頂きありがとうございます…。もしあのままであったら、私はもちろんの事………アニまで犠牲になっていたかもしれなかったので。………………あ!アニと言いますのは以前私についていた侍女の名前でございます」
このお方にアニの話をしても分からないわよね……。
そう思いながらアニーナ様の方へ視線を向けると、何とも不思議な表情をされていた。
「アニーナ様…………どうかされましたか?」
「……あ、いえ。やはり詳しいお話は聞かされていなかったのですね」
「と言いますと?」
私は苦笑するアニーナ様にそう聞き返す。