暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
高貴な方でなくとも牢屋での生活は苦痛で、異常なほどの疲労を伴う。
仮に私がフィグリネ様を亡き者にしようと企みそれにより命令を受けたなどと嘘を白状すれば、もしかしたらアニーナ様だけは助かっていたかもしれない。
こんな遠い地では仲間が助けに来る確証だってなかっただろうし……。
「今回はたまたま運が良かっただけで……他国のお妃様が王位についてもいない方の、しかも側妻を助ける理由やメリットもありませんのに…なぜ」
そんな疑問を口にする私に、アニーナ様はゆっくりと口を開いた。
「スフィア様……。それは違います」
「………え?」
「メリットや理由など、助けるのにそんなのは必要ありません。確かに死を覚悟致しましたがそれよりも私の軽率な行動でスフィア様を巻き込んでしまったことに心が痛みました。そしてこのような事件の引き金を引いてしまった元凶は私にもございます。ですので、行動を起こすのは当然でございます」
「理由がないのに助けたのですか……」
普通ならあり得ない言葉だ。どのような人でもした事に見返りを求める。利益があるから愛想よくする。利益がないからこの方とは絡まない。
そのような場面を私は幾度となく見た。
利益がないことをしても何の得にはならない…と、誰かがいつか言っていた。
このハレムは社交界は、損得で成り立っている。
そう思っていた。
私のような得のない者には誰も手を差し伸べないと…思っていたけれど。
そうでしたわね。
アニは…アニーナ様は私を変えてくれた唯一のお方。
引きこもりがちで自身のない私を外に連れ出し、無くしかけた自信を取り戻させてくれた。
アニーナ様は損得で動かれるお方ではなかったわ。