暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「どうしたのかね?」
「い、いえ………っ!何でもありません。それよりも学園内をそろそろ…」
ボロが出てバレても困るしね。
「あぁ、そうだね!では案内をしようか」
理事長先生はそう言うと私達を連れて部屋を後にし、まず始めに1年生の教室へと案内してくれた。
___ガラガラ……。
授業を邪魔しないように後ろから慎重に中へ入り、様子を伺う。
紺色の学生服に身を包んだ生徒たちが黒板に向かい、必死に教師の授業を聞いている。
少しの音じゃ全く気づかない。
「ここは1年の特進科クラスだ」
「中学校なのに科があるのですか……?」
「あぁ。一般的には高校から科別に分けているがここはそれぞれの目標や学力に沿って、科を学園側で分けさせて頂いている。これが思いの外生徒達や親御さんからも高評価でね(笑)」
一定に留めず更に上を目指せる環境というのは、目標が決まっているものほど有り難いものだ。
「特進科にいる生徒たちの大体はやはり大学へ上がるのですか?」
「いや。もちろんそれもあるのだが、今は大学進学だけでなく就職の面でも本気で勉強をする子達が増えているよ」
「就職………ですか?」
中卒だけではどれほど勉強しても良い所には就けないと思うのだけれど……………………。
「貴女は宮殿の中で働く者達をご存知ですかね?」
「え?…………まぁ、知っていますけども……」
働いていたしね…………。
「宮殿の職に就くのはとても難しい事で、試験はそれこそ難関とさえ言われているのだ。普通に勉強してはそこへ就けない。そう思った子供達がわざわざこの学校へ入学してきたりもするのだよ」
つまりこの中には………宮殿に就きたいが為に必死になって勉強している者もいるわけなのか。
こう言った光景が見れることも宮殿の者としては凄く貴重な事でもある。
「それにしても…………凄く難しい内容をやっているのですね」
黒板に書かれている文字を見ると海外の言葉で………………宮殿の試験でも恐らくこの様にハードな問題は出ないと思うのだけれど。
「おや、これが分かるのですか?」
「あ……………まぁ」
「これは大学生でも頭を悩ませる内容ですが………………いかがです?お手本として解いてみられては。ねぇ、グレンダー先生?」
ひらめいたようにそう言うと理事長先生は黒板の前に立つ女の先生に声をかけた。
「あら、理事長先生いらしていたのですね。私は別によろしいのですが…………そのお嬢様にこの問題が解けるとは到底………」
私をチラッと見たあとそう言って困った顔をした。
その顔は解けなくてお客様に恥をかかせてしまうとでも言うような顔だった。
「大丈夫だ、安心しなさい。生徒達も解けない子が大半だ。気にせず解ける所だけ解けば良い」
そう言う理事長先生も私が完璧に解けるなんて事は期待していないみたい。
まぁ、良いんだけれど。
「……………では、分かるところだけ」
生徒達の机が均等に並ぶその隙間を通り抜け、前の黒板へと向かう。
クレハは少し心配するような顔だったが、何一つ心配するような事は恐らく起こらないと私は思うのだけれど……………………。
黒板に書かれている文字をジッ………と見つめる。
黒板にはこう書かれていた。
『次の異国語を読み取り、それにあった返答文を書け。{ᘜᔌᔕᎯᖻᘔᑭᏧᏋᏁ,ᏧᏟᏰᎶᏬᏔ?}』
……………なるほどね。
私は一息ついた後白いチョークを手に持つ。
そして、
_______カッカッカッカカッ………。
『∀∌∴₪ᔌᕮᗯᎨ.』
ある文を完成させた。
生徒たちには何を書いたのかはさっぱり分かっていないみたいで皆ポカーンとしていたが、理事長先生とこの女の先生はかなり驚いているみたい。
「訳させて頂きますと、先程黒板には『あなた方はなぜ、ここへ来たの?』と書いてあったので私は『見学に来ました』と返事させて頂きました」