暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
その他にも意味はあるようだが、ひいきなどではなく認められた実力だと言う事には変わりない。
「クレハにこの事をアニーナ様へ言わないよう口止めしたんだろう?意地の悪い事を本当するよ…」
「別にいじめている訳ではない。ただ……初めて互いに顔を合わせた時どのように面白い反応を見せてくれるのか楽しみだとは思わないか?」
「思わないね」
何だか楽しそうに口元を緩ませる陛下に、ファンは即答してみせた。
「別にどちらでも構わないが、正妃任命の儀の前に顔合わせは頼むよ。当日この事を知って儀式に支障をきたされても困るしな」
「確かにそれもそうだな。アニーナは冷静に行動をとれるが弟の方はそうとは限らない。驚きの行動を取り、儀式を台無しにされても困る」
陛下はファンのその言葉に『確かにそうだ』と納得する素振りを見せた。
「いつ顔合わせするかは考えておこう。それよりもそろそろ……来る頃なのだが」
陛下はドアをチラッと見るが、ノックする音が聞こえそうな雰囲気ではない。
「……仕方ない。俺が見てくるよ」
それを見かねたファンはドアの方に足を向けると、静かに部屋から出て行った。