暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
その後は音楽室に美術室、学園が誇る大きな食堂に……………理事長先生が案内するがまま学園内を回った。
今の所一番興味深いと感じたのは科学室の横に位置する無菌室で、白衣を着用し無菌の中で植物などを培養する部屋らしく、
少しでも他の物が混ざってしまうと、無菌ではなくなってしまうので失敗という形になるそう。
最終的には培養された植物は徐々に外の空気に慣れさせていくらしいが、
その無菌室で育てられた植物というのか非常に気になる。
「では、最後に稽古場へ案内致しましょう」
理事長先生はそう言うと一度昇降口へ向かって靴を履きかえ、
外へと案内してくれた。
そこには茶色い土に相手を想像させた手作り人形がポツポツ立ち並ぶ剣術専用のような場所で、沢山の男子生徒が太めの木の棒を手にし互いに交していた。
「や………っ!!!さぁぁぁあ!!!」
「くっ………!!」
生徒達の声と激しく木のぶつかる音。
「バーボン先生ご苦労様」
「これは理事長先生。いかがなされたのですか?」
生徒の動きを見つつ、腕の下がりや技術指導を指摘していた30歳後半に見えるその男は、どうやらバーボンと言うそうで、
理事長先生は私達をそのバーボン先生に紹介した。
「見学させたいのだが大丈夫かね?」
「私(わたくし)は構いません。しかし、見ても楽しくないと思いますが……………」
「それは気にする事はない。今回は見学でこの方達は参ったのだ。先生さえ良ければ見せてあげなさい」
「…………分かりました。では、今回は特別に生徒同士の対戦をお見せ致しましょう」
バーボン先生はそう言うと生徒達を集合させ、自分を中心に丸い円を作るようその周りを生徒達で取り囲ませた。
「今から代表の生徒達が本気の対戦を致します。…………と言いましても本物の剣は使わず木の棒使用させておりますのでご安心下さいませ。先に木の棒から手を離し負けを認めた方を敗者と致します」
バーボン先生は簡単な説明を皆の前にし、2名の生徒を前に呼んだ。
「キセル・マンフス」
「はい!!!」
呼ばれた生徒は大きな返事をし、そこへやってくる。
「グラント・セレファーナ」
…………………え?
最後に呼ばれたのは何と弟の名で、
しかし返事は返ってこない。
「セレファーナ!!?返事をしなさい!!」
動揺する生徒達の声と、大きな先生の声。
少し経ち囲む生徒の間を掻き分けるように姿を現したグラントは状況を確認するようにダルそうな目を周りに向け、
最後に私と目があった。
「あ…」
思わず私から声が出る。
ここに来ることはグラントには秘密にしていた。
驚きに満ちあふれたその顔と、『なぜ居るの?』と言っているかのようなその瞳に、
可笑しくて思わず声が出てしまったのだと思う。