暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


「遅くなりまして申し訳ございません、陛下」

私は許しを請うように陛下へ頭を下げると、それを見た陛下は気にしていないとでも言うような表情で、もっと前へ来るよう私に視線を送ると自身は執務机から立ち上がり、机を挟むようにして並べられたソファーへと移動をした。

それを見た私は陛下の待つ机へ近寄ると、トレーの上に用意された華やかな模様が入れられたコーヒーカップとお皿に盛りつけられたバタークッキーを丁寧に並べた。

「丁度休憩される頃だと思っておりましたので、宜しければお召し上がりください」

私が陛下に向けてそう言葉をかけると、最初にコーヒーカップを手に持った陛下は無言でそれに口を付ける。

「……これだ」

そしてコーヒーカップのふちから口を離すと、満足気にそう呟く。

「そなたの淹れるコーヒーはこの宮殿で働くどの者よりも、非常に美味しい」

そう言ってもう一度カップを手に取り、口をつけた。

「お気に召されたご様子で安心致しました」

ファン様を探させに行かせるほどに痺れを切らしていらしたのに、穏やかなご様子で良かった…。

「立ち話もなんだ。そこに座ると良い」

「えぇ。では、失礼致します」

私は陛下の向かいにあるソファーに腰を下ろすと、執務机の上に置かれてある資料の山に目を向けた。

「お忙しい時に私を呼ばれたりなどして宜しかったのですか?」


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