暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


休憩されるにしてもそんな貴重なお時間に私を呼ばれるなど、何だか……勿体ないというか申し訳ないというか。

しかし、逆に考えれば貴重な休憩時間を私に割くほど大事な話なのかもしれない。

「そなたに渡したい物があってな」

「渡したい……物ですか?」

「そうだ」

陛下は短くそう返事をすると懐から深みのある真っ赤な紅色をした正方形の箱を取り出し、私の前に位置する机の上にそっと置いた。

凄く高級そうな見た目の箱だけど………これって宝石箱だよね?

私は戸惑いつつもそれを置いた陛下をジッと見つめると、視線に気づいた陛下は『開けてみよ』と私にそう言い、再びコーヒーを口に含み。

「……では失礼します」

恐る恐るその小さな正方形の箱を開くと――――――………


「か、可愛い……っ!」

「気に入ったか?」

「このような物を初めて拝見致しました」

中に入っていたのは金色のふちで囲ったしずく型の可愛らしいイヤリングで、型の中には箱と同じ色をした薔薇のドライフラワーと、それを引き立てるようなキラキラと光る素材を周りに散らせ一緒に固められていた。

宝石でないのに、まるで宝石かのように輝いていて………思わずその美しさに目を奪われる。

「赤の薔薇はそなたに似合うと思い、職人へ頼み特別に作らせた品だ。気に入ったようで良かった」

「え、特別に作らせたのですか!?」

「あぁ。せっかく正妃となるのだ。その記念にと作らせた」

………嬉しいけれど特別に作らせなくても良かったのに。

私には何だか贅沢すぎる贈り物だ。

しかし……せっかくのご厚意なのだから、今回は素直に受け取っておこう。


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