暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


「話は変わるが、今年の採用試験では実力のある者だけを厳選して採用した為、どの年よりも今回は採用人数は少ない。それは、騎士や兵士に関わらずメイドに関しても同じだ。以前のような事件を再び引き起こされても困るからな」

……今にもその時の光景が目の裏に映し出されるかのようなあの残酷な事件。

真っ直ぐに向けられた刃先の鋭い剣と死の恐怖。

そして、流れ出す大量の血。

苦痛に顔を歪ませるあの時のリリアンが…忘れられない。

「…ですが、どんなに難易度を上げても本気で立ち向かってくる者には勝てない気がします。そう言った者は目的を果たす為ならばどんな状況であれど潜り抜けてくるでしょうし…」

皇后となればより一層命が狙われ、常に身が危険が潜む。

陛下はその事について私の身を案じて下さってるのだろうが、それは反対に有能な暗殺者を送り込まれる可能性も秘めている。

捨て駒の暗殺者でなく、頭脳にも技術にも優れたそんな暗殺者が、もしかしたら既に合格者の中にいるかもしれない。


以前よりも、メイドであった時よりも、身が危険に晒されるけれど、陛下のお側にいたいと願った時からそのことに関しては覚悟を決めていた。

でないと陛下の隣にはいれないから。


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