暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「…………ほぅ。これは一戦交えてみたいものだ」
呆然とする私の隣でクレハは興味深そうに発言をしたのに、
「いや…だから貴方は国の騎士なんだから、学生であるグラントは刃も立たないわよ………」
咄嗟に呆れたようなツッコミを入れる。
この人はずっと戦いたいような発言ばかり。
鈍ってしまうので体を動かしたいという気持ちは分かるが、戦いというのは勝者がいれば敗者がいる。
剣を向け、血を流し合うのはあまり好きではないのだが…………
「アニ姉!」
そんな事を思いつつ視線を前に向けると、先程戦いを終えたグラントが私の元へ駆け寄ってきてるのが見えた。
「お疲れ様。グラントは強いのね〜!」
「え、そ、そうか…?じゃなくて!!ちょっとこっちきて」
「え?なに??」
腕を引かれるがまま少し離れたところへ連れて行かれるとグラントは疑問を私にぶつけた。
「何でそんな格好なわけ?」
「え?なにが??」
「いつも変装なら眼鏡と髪型はしっかりしてたアニ姉が、今日はなんか…緩いというか珍しいなって」
"緩い"と言うのはこの結ばれていない金髪のウイッグの事だと何となく私は察し、眼鏡をしておらず少し素よりになっていたのでグラントは心配したのだろう。
「別に今回は緩くても大丈夫よ(笑)今日はお仕事の視察を含め騎士様と一緒なの。ほら、あそこに男の方が見えるでしょう?あの方が宮殿の騎士様」
そう言うとグラントは少し表情を固くさせ、
「宮殿の騎士……?」
と疑うように呟きそちらに視線を向けた。