暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
リーダーらしきその男は部屋の中へズカズカと足を踏み入れると、
上から下に座っている女達を見渡した。
自分にあった良い方が見つからないのか………いや見つかってほしくもないのだが、その男は奥まで女を探しに歩いてくる。
「…………違うな」
いい感じの女を見つけ顔をジックリ見つめた思えば直ぐに視線を反らし次へ行く。
そしてどんどんこちらの方へと近づいてくる。
「良いやつがおらんなぁ〜…………………ん?」
何かを見つけたかのように急に立ち止まる。
そして、それが自分の前だということに気づいてしまった。
「金髪かぁ………その瞳も中々おもろいなぁ!まるで聖水のようや」
『聖水』というのはもしや青色の瞳の事を言っているのかもしれない。
「よく顔を見せ」
男はそう言うと私の前にしゃがみ込み、顎に手を触れ上に向けたり横に向けたりなど向きを変え、更にジックリと観察し始めた。
止めてほしかったがもはや抵抗する力は残っていなかった。
「……悪くない。よし、コイツを連れて帰る!」
何が良かったのか…………ここには沢山の女の方がいるのに、
何故かその男は私を選び既に手続きを始めていた。
「ほな、行くで」
腕を掴み無理やり立たせようとするが、立つ気力すら私にはない。
「結構衰弱してるな。もうちょっと商品管理丁寧にした方が良いんとちゃうかー?」
「申し訳ございません!!今後から直させて頂きます」
「………はぁ面倒やわ。よっと……!」
その男が重いため息をついたと思ったら急に私の体は中に浮き、
その男が前に抱えているのだと直ぐに悟った。
「お、おやめ下さい……!それぐらい私が致します!!」
何やら後ろにいた1人がかなり焦っているようだったが、まるでいつものように軽く交わす。
「良い。持てる」
「しかし…………」
「取りあえずこの国から出る支度を進めよ!…………上手く出れるのだろうね?」
「えぇ!!既に話は通してあります」
スーツの男はごまをするようににこやかにそう答えた。
「お金はそれで良かったようだな。世話になった」
スーツの男にそうお礼を言うと、その男たちは国境を管理する門の付近まで繋がっている秘密の地下道を歩き始めた。
このままでは連れ去られてしまう。
そう分かっているのに体が動かない。
ふと私を抱えているその男を下から見上げるとあるものが目に入った。
それは、
「赤……い………?」
赤にも見えるワインレッド系の髪色。
それはまるである国の種族の性質とよく似ていた。
滅多に雨の降らない砂漠の地にある国の王族で…………………その国は確か、
「ガルゴ………王国……」
私は男にも聞こえないような小さな声でそう呟くと同時に眠りについた______。