クールな御曹司の甘すぎる独占愛
◇◇◇
その日も開店から休業状態に近い、閑散とした光風堂は、明美の明るさが救いとなっている。
「少し前まで奈々さんは目の回る忙しさだったじゃないですか。きっと神様が休めと言ってくれているんですよ。悪い噂だって、すぐにみんな忘れちゃいます。今は次から次へと、人のあげ足をとるような情報が流れてきますから」
「ありがとう」
しばらくは花いかだと宮内がくれる大量注文でなんとかやっていくしかないだろう。明美の言うとおり、時が経てばまた客足は戻る。光風堂の和菓子には自信がある。こんなときこそ新作の構想をしようと、奈々は厨房にこもった。
その日の夜。
花いかだの個室には、宮内と奈々の姿があった。
ふたりが顔を揃えたことに依子は驚きを隠せない様子で、「大丈夫なの?」と心配そうに奈々に耳打ちをしてよこした。
「で、俺に頼みたいことって?」
「私を奪う演技をしてほしいんです」
「……は?」
回りくどく言っている猶予はない。奈々は単刀直入に口にした。