たった7日間で恋人になる方法
『萌、時枝君はいつ来るのよ?』
部屋の中央の輪から離れて、壁沿いの椅子に腰かけていた私に、美園が話しかけてきた。
『まだ、連絡ないけど…』
『ったく、何の為の恋人役なのよ…まさか、上手く演じる自信がなくて、怖気づいたんじゃないでしょうね』
『拓真君は、そんな人じゃないよ』
『ハイハイ、恋は盲目ってやつね』
美園にとって、拓真君は職場の同僚である”時枝拓真”のイメージのままだから、思い描く心象は、あまり良いものじゃないのかもしれない。
最も今日は仕事で、職場からそのまま来るのかもしれないから、見た目的にはあまり変わらないかもしれないけど。
『でも今日はもう、別に間に合わなくても、大丈夫そうだけどね』
『どうゆう意味よ?』
『だってほら、関本君って人、全然私に興味無さそうだし、案外最初から恋人役なんて必要なかったのかも』
『…甘いわよ、萌』
美園は淡いピンク色のカクテルを手に、談笑している中央の輪を見ながら、声のトーンを少しだけ抑える。
『彼、何気に萌のこと、ずっと気にしてるし…時々、チラチラ見てるもの。隙あらばッて、顔してる』
『まさか』
この2時間を振り返ってみても、それらしいそぶりなど何もなかったし、打ち合わせの間にも2~3言葉も交わしたけど、取り立てて特別気に入られている感じもなかった。