たった7日間で恋人になる方法
『そろそろ、戻らないと』
折しも時刻はもう10分ほどで、昼休みが終わる時間帯。
同じく公園内で過ごしていた、会社員らしき人々も、それぞれのオフィスへ戻り始めていた。
『萌』
振り向くと、未だ立ち上がる気配もない美園が、その美しく整った真顔で攻めるように聞いてくる。
『本当にそれで良いのね?』
美園の視線は、私の顔ではなく、その先にあるものを探っているようにもみえた。
『もちろん』
作った笑顔は、ぎこちなく、我ながら酷いダイコン役者だ。
それでも美園はそれ以上は何も言わず、ただこの上なく大げさなくらいの大きなため息をついてからスクリと立ち上がり
『戻るわよ、昼休み終わっちゃう』
そういうと、颯爽と自分達のオフィスに向かって歩き出す。
その後ろをついて歩きながら、またも首筋がズキッと痛み、何故が心臓の奥までキュッと苦しくなった。
…大丈夫。
たった1週間で動いた気持ちなんて、すぐ忘れるに決まってる。
この痣が消えるころには、きっと…。