たった7日間で恋人になる方法

『どうしたの?』
『萌さん…帰り、平気?』
『帰り…』
『さっきの…この階のホールからの景色、普通の人でも結構クルけど…』

忘れてた…上がってきたってことは、降りなきゃいけなかったんだ。

でもこれ以上、拓真君を待たせるわけにはいかないし、いざとなれば、今度こそ非常階段を使えばいい。

『大丈夫、だいたいの位置はわかったから、エレベータ来たら直ぐ乗って、ボタン押したら目つぶっちゃえばいいし、最悪帰りは非常階段でも…』
『迎えに来るよ』
『え?』
『こっちもコレ営業に届けるだけだし、5分で戻るからここで待ってて』
『いや、悪いからいいよ』
『言い忘れたけど、ここの非常階段も、ところどころ大きな窓あるよ』
『え、本当!?』
『用事済ませたら、すぐ戻るから』
『あ、拓真く…』

言うや否や、踵を返し、エレベーターホールに消えていく。

正直言うと、拓真君の申し出は凄く嬉しいのだけど、本物の彼氏でもないのに、こんなに甘えちゃって良いものだろうか?

”嫌じゃなかったら…”

さっきの、照れくさそうな拓真君を思い出し、口角が上がってしまう。

『優しすぎるでしょ』

手に持った茶封筒を抱えなおし、やっぱりほっこりした気分で、専務室に向かった。
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