たった7日間で恋人になる方法
重厚な木枠に【専務室】と書かれたプレートが張られている扉をノックし、中から『どうぞ』と、返事がしたのでそのまま扉を開ける。
『失礼します、総務部の森野です』
入ってすぐ正面の大きなデスクに、杉崎専務が座り、その前にはグレーのスーツをシュッと着こなした、やたら姿勢の良い男性が立っていた。
『じゃ、牧村君、営業部長にもそう伝えてくれ』
『はい、承知しました…では、僕はこれで』
男性はそういうと、杉崎専務に一礼して、すぐ近くに控えている秘書の女性にも軽く会釈をしてから、こちらに向かってくる。
扉の前にいた私は、彼の為に少し横に移動すると、『お先に』と微笑まれ、部屋から出て行った。
…この人が、噂の”牧村さん”なのね。
確かに、リアルな女性が好みそうな、端正な顔立ちをしていた。
『君も、牧村君の色香にやられてしまったかな?』
『あッ、いえ、そんなことは…』
揶揄うような専務の声に、ここが専務室であることを思い出し、慌てて否定する。
『良いんだよ、彼のあの容姿じゃ女性は一溜まりもないだろうからね、なぁ榊君』
『ええ、秘書課でも、彼の名は有名です』
『あのッ、私は、全然違いますから』
思わず強く否定すると、二人とも驚いたようにこちら見る。