たった7日間で恋人になる方法

『あ、すみません…えっと、この書類…部長から専務に渡すようにと』
『ああ、そうだったね』

40代で専務まで上りつめ、確かまもなく50も間近の年齢の割には、まだまだ若々しい杉崎専務も、既婚者とはいえ、女性にモテそうながっしりとした体形。

牧村さんとはまた違って、野心に溢れているその強い瞳が、女性を引き付けるのかもしれない。

持っていた封筒を渡すと、その瞳でジッと見つめられ、『くだらない冗談言って、すまなかったね』と謝られた。

『いえ…』
『書類は確認にして、何かあれば、こちらから直接連絡するよ』
『はい、部長にはそう申し伝えます』

その強い瞳から逃れるように視線をずらすと、すぐ後ろの窓に広がる高層からの景色にクラりとして、早々に視線を戻す。

『では、失礼します』
『ああ、ご苦労様』

挨拶もそこそこに、逃げるように、専務室を後にした。
< 56 / 274 >

この作品をシェア

pagetop