たった7日間で恋人になる方法
廊下に出て、専務室の扉を背に、ホッと一息つく。
”お使い”はすぐに終わってしまい、まだ時間は早いけど、迎えに来てくれるという拓真君を待つ為に、さっきの廊下まで移動する。
一つの目の角を曲がり、先ほどの広い廊下に出たところで、壁に背を預け腕を組むようにして、誰かを待っているような牧村さんに遭遇した。
『やあ、お疲れ様』
『牧村さん…』
『嬉しいね、俺の名前知ってくれてるなんて』
さっき、専務室で聞いたばかりで、忘れるわけないでしょ?と思ったけれど、敢えて口にはしなかった。
『こんなところで、誰か待っているのですか?』
『君を、待ってたんだ』
『…私を?』
『総務の森野…萌さん、だよね?』
いきなりフルネームで呼ばれて、思わず身構えてしまう。
寄りかかった壁から、ゆっくり移動して私の前に立つ。
『そう警戒しないで、昨日の食事会で美園さんに聞いたんだ』
『美園に?』
『君とは同じ高校出身とか…どうりでいつも一緒にいるわけだ』
こちらは全く意識してはいなかったけれど、それは普段から私たちを見ているような口ぶりで、少しゾッとした。