たった7日間で恋人になる方法

『…美園狙い、ですか?』
『ん?…狙い?』
『悪いですけど、私を協力者に…って考えてるのなら、なりませんから。美園を落としたいなら、ご自分でアプローチするなりしてください』
『いや…参ったな』

学生の頃から、美園と一緒にいると、男性からのこの手の相談はよくある話だった。

でもさすがに今回は、そうなのだとしたら、女性社員が憧れるほどのありとあらゆるスペックを持ちながら、いい歳して恋愛の橋渡しなど、随分くだらない男なのだと、呆れてしまう。

『では、失礼します…』

まだ拓真君が来るまで時間がありそうだけれど、ここで牧村さんの相手をするつもりはなく、軽く会釈をして踵をかえした。

『森野さん』

エレベーターホールへ歩を進めようとして、また呼び止められ振り返る。

『勘違いされては困るな』
『何をでしょう?』
『君は…君自身だとは、思わないのかい?』
『は?』
『私が、口説きたい女性が』

また一歩、距離を詰められた。

窓も無く、昼間だというのに薄暗い廊下の中央で、自分よりいくらか背の高い、現実でのイケメンに間近で上から見下ろされ、何故か”ドキドキ”よりも、怖さが先に立ってしまう。
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