たった7日間で恋人になる方法

”チン”

上った時よりも、幾分早く降りてきた気がした。

見慣れた2階のホールに降りたつと、地に足が付いた気がして安心する。

『なんだ、時枝君が一緒だったんだ』

声がした方を見ると、ホールの入り口から美園がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。

『美園…』
『今、課長から、萌が部長のお使いで上に行ったって聞いて、迎えに行こうと思ってたのよ、…あんた、高いとこダメでしょう?』

長い付き合いで何でもわかっている親友の優しさに、さっきまでの緊張感が急激に緩和していく。

『じゃ、森野さん、僕はこれで…』

美園が目の前まで来る前に、いつもの”時枝拓真”に戻った拓真君が、小さくつぶやくと、通常のスタイル通り、背中を丸めて、足早に執務室へ戻っていく。

『時枝君!ありがとう』

その後ろ姿に、お礼を言うも、拓真君は一度も振り返ることも無く、廊下の先に消え去ってしまった。

追いついた美園と共に、既に姿の見えなくなった拓真君の向かった先を眺める。
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