たった7日間で恋人になる方法
拓真君の提案は、考えもしなかった突拍子もないものだったけれど、潜在的な私の心の中の願望が、如実に反応してしまう。
…だって、大好きな琉星とリアルな世界で、恋人の疑似体験できるなんて、ちょっと嬉しいかもしれない。
それに、少しでも慣れるためには、相手を琉星だと思って接した方が、案外拓真君の言う通り効率的な気もする。
なにせ一年もの間、バーチャルな世界とはいえ、琉星とはずっと恋人同志だったのだから。
『出来る限り、琉星になりきるよ』
そういう拓真君も、この数日ですっかり見慣れてしまったからなのか、最初に感じていたヲタク感もだいぶ薄れて、今や一見すると、ごく普通の男性にしか見えない。
そもそも、決戦の日まで日がないことを鑑みれば、四の五の言っている場合じゃなかった。
『…じゃ、お願い…しちゃおうかな?』
『うん、それじゃ…』
そういうと、拓真君は一瞬目を閉じて、小さく息を吐き、ゆっくり目を開けると、2~3段、階段を下りた先で振り返り、こちらに手を差し伸べる。
『おいで、萌』
差し伸べられた手は、昨日触れたばかりの拓真君の手なのだけれど、その物腰や名前の呼び方が琉星と重なり、少し緊張しながらも、自らその手のひらに自分の手を重ねてみる。
拓真君は、ホッとしたような表情で、今日は私を怖がらせないようになのか、緩くいつでも解けるような力で私の手を握ると、そのまま階段を降りる。
その手に引かれながら、拓真君の広い背中を見つめて、もうここまで来たら開き直るしかないのだと、心を決めた。