愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
桐島さんは私の目を見ながら、申し訳なさそうに顔をしかめ、けれどもきっぱりとそう言った。

彼の両親は音楽家で、彼が子供の頃から不在がちだと聞いたことがある。

その間、彼は叔父の家に預けられ、エマさんとは兄妹のような間柄なのだと。

彼にとって叔父の存在は、父親と同じように大切で大きなものなのだろう。

力を貸してくれと言われたら、断ることができないのは仕方ない。

私が彼の立場だったとしても、そうすると思うから。


桐島さんはまだ説明を続けている。

ベルギー社では副社長のポジションが用意されており、彼を中心としてライバル社の進出に対応するための大規模なプロジェクトチームを発足させる話がすでに決まっているらしい。

日本社では、社長のポジションについている彼だが、モルディはベルギー社が親会社で、日本を含めたその他各国のオフィスは子会社のような序列である。

これは桐島さんにとっても、出世のチャンスなのだと思って聞いていた。


話し終えた彼は、グラスの麦茶をひと口飲んで息をついた。

それを見て、私はやっと口を開く。

引き止めるつもりはないけれど、「いつまで、あちらにいるんですか……?」と、それが気になって。
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