愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
私が黙り込んだことで、《まさか、ふられたの!?》とあらぬ心配をさせてしまった。

「あ、違うよ! 変わりなくお付き合いさせてもらってるから大丈夫だよ」と慌てて否定すれば、ホッと息を吐き出す音がした。


《よかった。俺、姉ちゃんになにかあったら飛んで帰るから。困ったことや悩みがあれば相談して》

「武ちゃんに、私が相談するの?」

《あ、今、馬鹿にしたな? 弟だけど、俺だって成長してるし、姉ちゃんを支えたい》


姉思いの弟の優しい言葉は、私の心に染み込んで、勇気付けてくれる。

嬉しく思うと同時に、ベルギー行きについて、やっと結論を出すことができた。

その決意を胸に、姉として生まれた責任を果たそうと口を開く。


「ありがとう。私も武ちゃんがつらい時に、側で手を差し伸べられる存在でいたいと思ってるんだ。だから、気を使わずに、もっと頼ってよ……」


五分ほどで電話を終えると、少しも見ていなかったテレビをリモコンで消した。

裏庭で秋の虫が鳴いている声が、静かな居間に入り込む。

立ち上がった私は仏壇前に移動して正座をし、手を合わせる。

紫陽花の季節は終わり、仏壇には生花店で購入した秋の花が供えられている。

他には、出始めの梨と、水無月堂の黒糖饅頭も。

それらを眺めながら、心の中で祖母に話しかけた。


おばあちゃん、私、決めたよ。

桐島さんにちゃんと説明できるよう、見守っていてね……。

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