愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
それから一時間ほどが経ち、時刻は二十三時四十五分。

玄関の引き戸が静かに開けられた音がして、桐島さんの帰宅に気づいた。

立ち上がった私は居間を出て、玄関先まで出迎える。

靴を脱いでいる彼に「お帰りなさい」と声をかければ、振り向いた彼が「ただいま」と優しく微笑んだ。


「まだ起きてたんだ。先に寝ていいと言ったのに、待っていてくれたの?」

「はい、あの、話したいことがあって。ベルギー行きのことなんですけど……今、いいですか? お疲れのところ、すみません」


緊張して、声が少し震えてしまった。

それで、私がどんな返事をしようとしているのかを察した様子の桐島さんは、目を伏せて残念そうにため息をつく。

傷つけてしまったと心に痛みを覚える私であったが、目を開けた彼は微笑みを取り戻し、私の頭を撫でてから廊下へと足を踏み出した。


「手を洗って、着替えてくる。居間で待っていて」

「はい……」


数分して、浴衣姿の桐島さんが居間に入ってきた。

彼はいつもの食事の席で、座布団の上にあぐらを組んで座った。

私は彼の横に行き、正座をすると、畳に両手をついて頭を下げた。


「私、ベルギーには行きません。ごめんなさい」

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