愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
スマホを握りしめた私は、一階の自分の部屋に入り、敷布団の上に正座をする。

和風な天井照明の明かりを最小まで絞った薄暗い中で、スマホ画面に桐島さんの名前を表示させた。


ベルギーのブリュッセルとは、時差が八時間ある。

桐島さんの過ごす時間は十五時頃のはずで、きっと忙しく働いているのだろう。

電話をかけようと思ったけど、迷惑かな……。


いつもこうして迷い、私からは、なかなか電話をかけられない。

向こうの時間が昼間だと、仕事の邪魔になると思い、夜の場合は、疲れてもう寝ているかもしれないと考えて遠慮してしまう。

朝は、出勤準備で忙しいだろうと気を使い、電話するのをためらってしまうのだ。


それならば、メールを送ろうと、文面を考える。

【桐島さん、お元気ですか?】という書き出しの文章は、その後が続かない。

【今日、噂を聞きました】と打ち込もうとして、また迷いが生じていた。

まだ当分、日本に戻れない状況になったのだとしたら、誠実な桐島さんならば、必ず私に知らせてくれるはずである。

今日の昼に聞いた話は明確な根拠のない、ただの噂なのに、こんなことで彼を煩わせるのはいかがなものなのか。

それに、桐島さんを信じていないと思われるのは、嫌だ……。

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