愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
早々に家探しを始めた理由は、ふられてやけになっているからではない。

動き出せば心が前向きになり、悲しみをうまくコントロールできそうな気がするからだ。


桐島さんに対して恨み言はひとつもなく、この胸にあるのは、感謝の思いのみである。

彼が職を与えてくれたから、贅沢をしなければ、私と弟の生活費、学費は給与で賄えると思う。

足りなければ、紫陽花荘を桐島さんに買ってもらった時の貯金を崩せばいい。


不動産屋の担当者は若い女性で、愛想のいい笑顔で対応してくれた。

私が希望する1Kの安アパートは、会社から電車一本で通勤できる距離に五件ほどあった。

プリントアウトしてくれた間取りや家賃の書かれた用紙をもらい、内覧は後日申し込むということで、不動産屋を後にした。


電車に乗り、二駅先で降りて外に出れば、見慣れた駅前の景色が茜色に染められていた。

ロータリーの客待ちのタクシーも、新しいマンションの外壁も、居酒屋の入れ替わりが激しい鄙びた雑居ビルも、全てが穏やかで暖かな色に塗られている。

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