愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「おばあちゃん!」

私も靴下のまま庭に飛び降りて、祖母に駆け寄る。


「おばあちゃん、どうしたの!?」

横向きの顔を覗き込んでハッとした。

口から大量の血を吐いて、意識はない。

青ざめる私が祖母の体を揺すろうとしたら、桐島さんに止められた。


「動かさない方がいい。息も脈もある。救急車を呼ぼう」

「は、はい」


慌てて縁側に投げ置いたバッグの中からスマホを取り出すも、手が震えて正しい数字を押すことができない。

桐島さんがすかさず私の手からスマホを抜き取り、代わりに電話をかけ、状況を説明してくれている。


祖母が切った青紫色の紫陽花の花が三朶、地面に落ち、赤黒い血に濡れていた。

情けない私は祖母の横にへたり込んで、涙目で震えるしかできなかった。



それから五日が経つ。

今日は朝からしとしとと悲しみの雨が降り、紫陽花の咲く庭も、下宿屋の建物も、全てを暗い色に染めていた。


祖母は倒れてから一度も目を覚ますことなく、病院に着いて間もなく息を引き取った。

食道静脈瘤の破裂が死因だと、医師に告げられた。

静脈にできたコブは自覚症状がないまま大きくなり、ある日突然破れて、出血性ショックで亡くなる人も少なくないのだとか。

そう説明されても、祖母の死をすんなりと受け入れることはできずに、私は苦しんでいる。

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