愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
それを頼んだのは私なのに、寂しさが押し寄せている。

しかし、哀愁に浸っていられる状況ではない。

早く就職先を見つけて、私も紫陽花荘から離れないと、この土地を所有している限り、高い税金を払わねばならないのだから。


台所の手前にある階段の前に差し掛かったら、二階で微かな物音がした。

本かなにかを落としたような音だ。

足を止めた私は、踏み板の幅の狭い急な階段を見上げる。

二階に貸し部屋は五つあり、ひと部屋はまだ使用中である。


桐島さん、引越し先を決めてくれたかな……。


彼だけはまだ紫陽花荘で暮らしており、荷造りもしていないようで、引越しの気配がない。

いつも通りのタイムスケジュールで行動し、飄々と暮らしている彼を見ると、もしかして次の住まいを探していないのではないかと不安になってきた。


桐島さんには随分とお世話になって、兄のように慕う気持ちがある。

このままここで一緒に暮らしていきたい気持ちは消せないが、それは叶わぬ夢で、出て行ってくれないと金銭的に困るのだ。


それで私は台所ではなく、階段に足を進める。

目的はもちろん、引越しについて、彼と話をするためである。

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