愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
ケーキは滅多に買わないけれど、いつも美味しそうだと思ってショーケースを眺めていたので、大体の種類は把握している。

桐島さんが買ってきてくれたものは、栗とホワイトチョコレートをトッピングし、マロンクリームでデコレーションされていた。

見たことのないチョコレートムースのケーキなので、きっと秋の新作なのだろうと予想して、コクリと喉を鳴らす。


今すぐ食べたい……。


でも、私もこれから夕食なので、このケーキは食後の楽しみに取っておこうと思う。


弾む気持ちを抱えて台所に入り、ケーキをお皿に移して冷蔵庫にしまったら、ふと気づく。

雨が降り始めたのは、つい先ほどのことのようだ。

私のために水無月堂に寄らなければ、桐島さんは雨に濡れずに済んだんじゃないかな……。

そう考えると、心苦しい。


いつも気遣ってくれる彼に、私がお返しできるのはご飯の支度だけ。

ひとりで食べるより、誰かと一緒の方が美味しいだろうと思い、空腹を感じても先に食べてしまわずに彼の帰りを待つようにしている。

でも、食事の用意は家賃無料の対価であるし、一緒に食べることくらいでお返ししている気になってはいけないよね。

彼のために、私が役立てることがあったらいいのに……。

< 54 / 258 >

この作品をシェア

pagetop