愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
こうして、手を合わせて遺影の祖母に語りかけるのは、毎朝の日課である。

それを済ませて立ち上がり、通勤用のショルダーバッグを手に廊下に出たら、浴衣に羽織姿の桐島さんが歯ブラシを片手に洗面所から顔を覗かせた。

寒そうに体を震わせた彼は、「もう出かけるの? 随分と早いですね」と驚いている様子である。


「私、他の人よりまだまだ仕事が遅いので、早めに出勤したいんです。それと、もう少しで完成するので、ワクワクして、じっとしていられなくて」


試用期間の三カ月は少し前に終わり、私にも他の社員と同じように重要度の高い仕事が回されるようになった。

基本的な仕事は覚えたし、パソコンで商品のパッケージをデザインすることもできる。

今は、この夏に新発売となるモルディ・ジャパン初のアイスクリーム製品のパッケージングチームに入り、デザインの一部を担当させてもらっていた。

商品のパッケージは、外部のイラストデザイン会社に発注することも多いけれど、アイスクリームに関しては作画から全てを自社で作り上げることになったらしい。


そして、私には作画の一部が任され、その作業がもうすぐ完成するところである。

自分の描いたものが商品となって売られるなんて、胸が高鳴り、早く完成品を目にしたくて気が逸る。
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