愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
紙袋の中からラッピングされたチョコレートを取り出した桐島さんは、目を三日月型に細めて、ほんのりと頬を染めている。


「有紀ちゃん、ありがとう。君には毎年もらっていたけれど、今年のものは格別に嬉しいです。世界にひとつ。私のために作られた特別なチョコレートだ」


彼につられて、私の顔も熱くなる。

急に照れくさくなり、もじもじしながら、「喜んでもらえてよかったです」と小声で答えた。


私は毎年、下宿人全員にバレンタインチョコを贈っていた。

手作りのチョコレートケーキを切り分けてお皿にのせ、各部屋に持っていったり、大量のチョコチップクッキーを密閉保存容器に入れて居間のテーブルに置き、【ご自由にどうぞ】とメモ紙を貼っておいたりした。


今年は他にあげる人はなく、桐島さんだけなので、ラッピングにも凝ってみた。

確かに“世界にひとつ”で、桐島さんのためだけの“特別な”バレンタインチョコだけど、日頃のお礼の気持ちを込めたのであって、彼に恋心を伝えたいわけではないのに……。

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