愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
子供の頃は学校の先生や近所のおじさんおばさんがよく褒めてくれたが、大人になってから他人に評価してもらえることは少ない。

紫陽花荘での掃除や料理に関して、桐島さんはいつも褒めてくれるけど、彼は私にとって最早兄のような存在なので、他人に含めたくない。

それで、田ノ上さんの言葉にすっかり嬉しくなった私は、さらにやる気をみなぎらせて仕事に戻った。


それから四十五分ほどが経ち、田ノ上さんを含めたアイスクリームのパッケージングチームのメンバーも、ほとんどが帰っていった。

その時、「小川さん」と背後から呼びかけられる。

作業の手を止めて振り向けば、それは本橋さんで、有名ブランドのお洒落なショルダーバッグを肩にかけ、コートを腕に抱えている。

「本橋さんも残業されていたのですね」と目を瞬かせれば、彼女は「ええ、会議用の資料を作っていたの」と微笑んだ。


本橋さんはアイスクリームのパッケージングチームに入っていない。

彼女としてはやりたかったようだけど、昨年のクリスマスと今年のバレンタインの新作パッケージを多く担当していたため、『本橋さんは働きすぎだな。今回は休んでいい。小川さんが入って人員は足りているよ』と上司に言われたらしい。


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