残念系お嬢様の日常
こうして雲類鷲 真莉亜として過ごしていくうちに、漫画の中の彼女が歪んでしまった理由がわかる気がした。
自業自得な部分もあるけれど、取り巻く環境は彼女に優しくはなかった。
養子である弟の方が出来が良くて親から愛情を注がれていたし、婚約者や伯母には嫌われていて雲類鷲家を名乗るのに恥ずかしい人間と蔑まれていた。
特別親しい友人もおらず、片思いは報われることはない。そして、彼女は主人公を苛めることで鬱憤を吐き出し、最後には誰かに殺されてしまう。
それを考えると今の私は幸せな環境にいる気がする。
少しうとうとし出した頃、医務室のドアが開かれる音によって意識が戻される。
誰かが入ってきた様子はないので、おそらくは先生が出て行ったのだろう。
頭の隅でぼんやりと考えていると、ベッドを覆われていたカーテンがわずかに開かれて、顔を覗かせた人物にぎょっとした。
「どーも。奇遇だね〜」
ミルクティブラウンの髪の持ち主が甘ったるい微笑みをむけてくる。
胸焼けしそうになりつつも、あえて顔を引きつらせながら微笑み返す。
「ええ……奇遇ですわね」