残念系お嬢様の日常


「……もしかして水ダメなのか?震えてる」

「前に、溺れたことがあって……それから苦手で」

ようやく呼吸が落ち着いてきた。

髪や服が身体にべったりとくっついて気持ち悪い。

全身ずぶ濡れになっちゃったし、蒼に知られちゃうだろうな。怒られるかな。


「ちょっと我慢しろ」

「へっ!?」

桐生は私の膝裏に腕を通すと、肩を抱いて自分の方へと引き寄せてきた。

完全に足が浮き、桐生の腕の中で支えられている形になり驚きのあまり間抜けな声が漏れる。


「な、なにしてるんですか!?」

「水の中なら軽いから気にすんな」

「いや、そうじゃなくて!」

こ、これって……水中お姫様抱っこ!?

しかも、相手は桐生ってことにも脳内パニック状態で、うまく言葉がでてこない。


けれど、泳げない今の私はこうして桐生に運んでもらうしかない。

冷え切った身体の内側から恥ずかしさで熱がこみ上げてくる。ありがたいけど、早く終わって!




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