残念系お嬢様の日常
桐生は無愛想だし、棘のある発言ばかりで腹立たしいけれど、この人のお陰で助かった。
あともう少し遅かったらどうなってたかわからない。
「……譲から頼まれたからここに来ただけだ」
「そう、彼が」
雨宮があのとき連絡していたのは桐生だったんだ。
桐生のクラスの方が階段に近いので既に校舎を出ている可能性が高かった。
だからこそ、雨宮は桐生に頼んでプールに向かってもらったんだ。
「桐生様」
「なんだよ」
「助かりました」
「……別に」
彼らしい返答が今は妙に安心感を与えてくれる気がした。
視線を上げて表情を盗み見る。桐生は決して笑わない。
だけど、いつもよりは少しだけ柔らかな表情に思えた。