残念系お嬢様の日常
「でも、助けられなかったと言うくらいなら、どうしてあんな結末にしたの?」
「俺も最初は夢の中の子を助けてあげたくて、救われる話を書いたんだ。でも部長がこの話は綺麗な結末ではなくて、悲劇の方が合うから、それも書いてみたらどうかって。それで両方書いたら、今回は悲劇の方を使われたみたい」
「……そうだったの」
蒼が見ていた夢は、漫画の中の真莉亜のことの可能性もある。
真相はわからないけれど、私や雨宮が前世の記憶を持っているように、他にも持っている人がいてもおかしくない。
そして、その記憶の保有量にはもしかしたら個人差があるのかもしれない。
私や雨宮のようにはっきり覚えているわけではなくて、薄っすらとしか覚えていなくて蒼の前世が恋スパを読んでいて、印象に残った内容を覚えていたとか?
それとも今後起こることを夢に見たとか……いやいや、それは違っていてほしい。
「そういえば、文芸部の部長って誰なの?」
「知らない」
「へ? でも、部長に悲劇の方がいいと言われたのよね?」
私の言葉に蒼が少し表情を曇らせて、「誰も会ったことないんだよ」と言った。