残念系お嬢様の日常


どうやらこの中から匂いがしているみたいだ。

この部屋には丸窓が付いていないので、ほんの少しドアを開けて中を覗き込む。

中にいたのは黒髪の男の子だった。

初めて見るはずだけど、どこか見たことあるような気がするのは何故だろう。


その男の子は重箱をテーブルに広げていて、昼食をとっているようだった。

覗いておいて今更だけど、匂いの元を探したところでどうにもならない。

寄り道していないで早く帰ってご飯食べよう。


そう思って、ドアを閉めようとした瞬間だった。

ヤツが耐えきれず、暴れ出したのだ。



グキュウゥウウと不細工な声は間違いなく私の腹部から聞こえてきた。


どうやら腹の虫は、私が息を吐いた瞬間を狙って鳴いたようだった。



「え?」

男の子が不思議そうに振り返り、こちらに視線を向けてくる。

私と目が合うと、驚いた様子で声をあげて立ちあがった。




< 220 / 653 >

この作品をシェア

pagetop