残念系お嬢様の日常
「あの、これは、その……」
「お腹空いているなら一緒に食べようよ」
恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じながらも、言い訳も思いつかないのでここは素直にいただくことにした。
「そこ座って?」
彼の目の前の席に腰をかけると、「まだ箸は口つけていないから」と言ってお箸を私に貸してくれた。
しかも、お箸は一膳しかないようで彼は二人だけだからいいよねと微笑んで手でつまんでいる。
お行儀悪いことをさせてしまって申し訳ない。けど、ものすごくいい人だ。
それにしても、よく知らない男の子と向かい合って重箱をつついているなんて不思議すぎる。
「名前、聞いてもいいかな」
「雲類鷲真莉亜と申します」
「そっか、君が雲類鷲さんなんだ」
なにやら私のことを知っているような口ぶりだ。
あ、この出し巻き卵おいしい。お上品な味付けは薄味派の私にはかなり好みだ。あと肉じゃがも美味しいなぁ。和食最高だ。
「あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「ごめん、名乗っていなかったね、桐生景人(けいと)です」
「桐生……?」