残念系お嬢様の日常
聞き覚えのある苗字に眉をひそめると、目の前の彼は付け足すように言った。
「拓人の兄です」
見覚えがある気がしたのは、どことなく顔のパーツが桐生と似ていたからだ。
桐生は笑わないし、表情や口調は全く違うからうまく結びつかなかったんだ。
いっつも仏頂面をしているあの桐生のお兄さんがこんなに優しい人だなんて。
……ん? いや、待てよ。桐生のお兄さんって確か原作でちょろっと出てたよ。
浅海さんが幽霊と噂されている人物と遭遇したときに出会っていた。〝わけあり〟のカウンセリングルーム登校のお兄さんだ。
手のひらに汗が滲み、顔が引きつる。
私はヤバイ人に関わってしまったかもしれない。すっかり忘れてて、今更思い出した。
桐生の一つ上の兄の景人は、不登校で留年してしまったため今は一年生だ。
「拓人、失礼なことしてない?」
「いえ……」
失礼なことというか、腹立つことされまくってますよ。おたくの弟さんにね。