残念系お嬢様の日常
「拓人はね、いつも仏頂面だけど本当は優しいんだ。僕はちょっと病弱であまり学校に通えていなくて、いつも迷惑かけてしまっているんだけど、嫌な顔せずに僕の代わりに色々としてくれるんだ」
雨宮よりももっと胡散臭くていい人オーラ全開の笑顔。
よくもまあ、こんな演技ができるものだわ。彼が誰なのか結びついてしまった私にとって、もう彼の笑顔は作られたものにしか見えない。
どうやら私はヒロイン(浅海さん)のイベントを横取りしてしまったみたいだ。
原作だと桐生兄弟の問題に浅海さんが巻き込まれる。そして、最終的には兄である桐生景人も浅海さんを気に入っていた。
……この人、犯人じゃないよね?
浅海さんを気に入ったとはいえ、意地悪をしている真莉亜を殺すまではしないと思いたい。
「確か君にも弟がいたよね?」
「え……はい」
急に蒼の話になり、箸を止めて視線を上げると景人が微笑みかけてきた。
顔が引きつりそうになるのを必死に堪えて、「それがなにかしら」という意味をこめて微笑み返す。
留年しているとはいえ、もともと一学年上であまり学校に顔を出さず、人と交流をほとんどしていない景人と蒼に接点があるようには思えないんだけどな。