残念系お嬢様の日常


本人が様をつけないでほしいというのだから、付けない方向でいこうと思うけれど、呼び捨ても馴れ馴れしい。

かといって、雲類鷲くんと呼ぶのも真莉亜も同じ名字なので妙な感じがしてしまう。



「じゃ、じゃあ……蒼くん?」

「うん。じゃあ、それで」

顔を顰められてしまうかと一瞬呼ぶことを躊躇ったけれど、彼は快く了承してくれた。

今まで特に親しい男の子がいなかったから、下の名前で呼ぶなんて不思議。

そういえば、桐生景人のことも、名前で呼んだことがなかったわ。彼にも今度なんて呼べばいいのか聞いてみようかしら。



「あ、そうだ。水谷川さん、この間もらったケーキすごく美味しかった」

「ほ、本当?」

彼と話していてわかるのは、好奇な目で見て虐めてくる男の子とも、好意を寄せてくる男の子とも違う。ただ純粋に助けてくれたんだ。


「またいつでも遊びに来て。姉さんも楽しそうだったし」

きっと蒼くんは真莉亜のことがとても大切なのね。

姉さんって呼ぶときの彼の表情が優しげで柔らかい。助けてくれたのも、真莉亜の友人だからという理由が大きいと思う。





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