残念系お嬢様の日常
「顔色が悪いよ。水谷川さん」
怖い。気持ち悪い。嫌だ。触らないで。近づかないで。そんな目で見ないで。
先生なのに、生徒に教える立場のくせにどうしてこんなことするの……?
「やっぱり具合が悪いんじゃないかな」
「や……っ」
パフッという力の抜けるような音がして、私の腕を掴んだ一木先生の力が弱まった。
その隙に腕を振り払って、距離をとる。
「そこまでよ!」
大きな音を立てて、カウンセリングルームの灰色の棚の上段が勢い良く開かれる。
まさか生徒がそこに隠れていたとは思いもしなかったのだろう。一木先生は唖然としている。
「か弱い女子高生の腕を掴んで、強引に密着している変態教師! 証拠写真はバッチリ撮ったわ」
上段の棚から飛び降りるように着地をした女子生徒は、スミレと一木先生の間に立った。
彼女の姿を目にした瞬間、全身に鳥肌が立つくらいの衝撃が走る。
令嬢らしくない登場の仕方は彼女らしくて、まるで漫画の中のヒーローみたいにカッコイイ。
「もう逃げられないわよ」