残念系お嬢様の日常
艶やかな長い黒髪に血色のいい紅い唇。
意志の強そうな瞳を縁取る長い睫毛。
花ノ宮学院の生徒の中でも、高嶺の花と言われている彼女は強く気高く美しい。
決して盗撮魔である一木先生に臆することなく、堂々と立ち向かっていく。
彼女は守られる花ではない。
近づかせない。摘ませない。凛とした一輪の花。
「逃げる? 何を言っているんだ? 僕は偶然ここに来ただけだよ」
「偶然ここにくるなんてことありえないわ。ここへ来ることは教師たちの間では禁止されているはずよ」
真莉亜はスミレを守るように片腕を広げて、鋭い視線で一木先生を睨みつける。
どうやらここへ来ることを禁止されている理由は、カウセリングルーム通いという桐生景人に関係しているみたいだった。
よくわからないけれど、彼の存在は生徒たちには隠されているらしい。
「桐生くんのことが心配になって覗きに来ただけだよ」
「あら? 先ほどは偶然とおっしゃっていましたよね」
「君が桐生景人くんのことを知っていると思わなかったからね。君はなにか勘違いしているよ」