残念系お嬢様の日常


驚くほど饒舌な真莉亜は、微笑みを浮かべたまま一木先生の表情をうかがいながら話を続ける。

「ああ、そもそも恋でもないのかもしれませんわ。だって、普通なら、盗撮なんてしませんものね。身勝手な欲を満たしたいだけだわ。スミレもとっても迷惑していましたの」

「……迷惑」

「ええ、スミレには心に決めた人がいるのに好きでもない、むしろ迷惑な相手に付きまとわれたら嫌に決まっていますわ」

「心に決めた人?」

一木先生の様子が明らかにおかしい。目が泳いでいて、頭をガシガシと掻いて指先が震えている。


「あら、ご存じありませんでした?」

「もしかして……君の弟が、その相手なのか」

掠れていて聞き取りにくかったけれど、確かに聞こえた。

君の弟というのは、蒼くんのことだろう。

ちょうど今日送られてきたメッセージには、蒼くんのことを聞いてくる内容が書いてあった。

もちろん真莉亜の言っている心に決めた人というのは、彼女が作った嘘だけれど一木先生を動揺させるには効果的だったみたいだ。






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