残念系お嬢様の日常
前世でも今世でも私は誰かに自慢できるような特技なんてない。
〝人並み〟程度にしかできない凡人だ。
だけど、それでも……私は人のいいなりになるほど何もできない人間ではない。
伯母様の手が振り上げられ、なにをされるのか瞬時に悟った。
身を引いて、伯母様をズッコケさせる姿を想像していると、背後から誰かに肩を掴まれて身体を後ろに引っ張られる。
振り下ろされそうになっていた伯母様の手は、ある人物によって掴まれて阻止されていた。
「……暴力はいけませんよ」
その光景に目を見張り、口が半開きになってしまう。
「っ、邪魔をしないでちょうだい!」
「すみません。彼女に手を挙げるおつもりかと思ったので」
伯母様の手をそっと下ろさせて、まるで忠誠でも誓うように頭を下げた男子生徒は甘ったるい微笑みを向けると、伯母様は毒気を抜かれたように目を丸くした。
「突然掴んでしまい、失礼いたしました」