残念系お嬢様の日常
私の狙い通り浅海さんは前方の私の存在に気付き、左側に避けた。けれど、何故か避けた瞬間、足をぐきりと捻りトレイが大きく揺れた。
「わっ!?」
「危ない!」
日頃の鍛えた成果もあり、素早く駆け寄って転びそうになった浅海さんをがっちりと支えることができた。けれど、また別の問題が起こってしまった。
「きゃああああ! 真莉亜様!?」
浅海さんのスープが私の胸元にべっちゃりとかかってしまったのだ。うん、思ったよりぬるい。浅海さんにも少ししかかっているけれど、私ほどではない。
「真莉亜様! 大丈夫ですか!?」
女子生徒達が青ざめた顔で駆け寄ってくる。きっとみんな、この男終わったなと思って浅海さんのことを見ているんだろうな。あらやだ、天花寺三人組もばっちり見てるよ。
「す、すみません!」
おろおろとした様子でトレイを床に置いて、ハンカチを取り出す浅海さんの手を『金雀枝の君』こと、片桐英美李が振り払った。
うわお、ちょっとそれは怖いってば。今痛そうな音したよ。