極上CEOの真剣求愛~社長の言いなりにはなりません~
彼の執務室の奥には、オフィスに泊まり込みになる時に休むための、簡易ベッドがある。
もちろん仕事で残ることも多いけれど、それ以外……女性と一晩過ごし、ホテルから直行の朝などもそこで仮眠していることを、秘書の私は知っている。
今朝も、私は出社してすぐ、そのベッドに寝そべる彼を見つけた。


『ん……唯(ゆい)ちゃん、あと五分……』なんて、気怠げでふざけた寝言が返ってきたから、昨夜は相当お楽しみだったことだろう。
その証拠に、手を当てて隠しているけれど、今も何度も欠伸を噛み殺している。


そんなボスの様子に、私は今度こそ溜め息を抑え切れず、はあっと声に出してしまった。
それを耳に留めた神楽さんが、「ん?」と小首を傾げて私を見遣る。


「なにか言いたそうだな、秋津(あきつ)さん」


ちろりと意地悪に細めた目で探られて、私は反射的にシャキッと背筋を伸ばし、大きく首を横に振った。


「いえ、滅相もない」

「相変わらずお堅い口調。もう二年も俺の秘書として働いてるんだから、いい加減俺に慣れろよ」

「慣れてるつもりです。結構」

「どこが。お前せっかく美人なんだから、もっと俺にも愛想よくしろ」


神楽さんは大して真剣な様子もなく、しれっとした言い方だったけど、私はその言葉にギクッと身を竦ませた。
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