極上CEOの真剣求愛~社長の言いなりにはなりません~
正直なところ、『美人』と『愛想』の関連性がまったくわからない。
とにかく、そこはきっちり正しておこうと、私は無駄に胸を張った。


「それ、セクハラです。コンプラ委員に……」

「一線置いて接するの、やめてほしいだけだよ。そういう切り返しも、堅苦しい。鉄を通り越して鋼の女だな」


私がどう切り返すか予測していて、流暢に被せられる。


「いや……違うな。お前の場合、修行僧とでも言った方が正解か」


私は不覚にも口ごもった。
心の中だけで、『誰のせいで修行僧なんかになってると思うの』と毒づく。
それをグッとのみ込み、黙って窓の方に視線を逃がした。


さっきはそこに映る神楽さんばかりを目で追ってしまったけれど、真夏なのにかっちりと紺色のスーツを着た私も、ぼんやりと映っている。


職種柄、オフィスカジュアル以上、エレガントな装いを求められる。
暑苦しいのにスーツを着ているのは、そんな理由だ。


ほんの少し癖がある茶色く染めたミディアムボブの髪は、毛先が肩につき、自然に内側にカールしている。


神楽さんは私を『美人』とさらりと言ったけれど、決してそんなことはない。
大きな目に力がある、とは言われるけれど、自己評価はせいぜい十人並みといったところ。
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