ファンタジー探偵と学園祭
「……医務室に行った時に、この学園では怪我や病気をした生徒は紙に丁寧に書かれることを知りました。しかし、あなたの紙にはどこにも「骨折」と書かれていなかった」

「書き忘れただけとか?」

アリスがそう言うが、アイリーンは首を横に振る。

「グリム先生はどんな小さな怪我でも、紙に書いていました。骨折という大きな怪我を書き忘れるとは思えません。あなたは、グリム先生を脅して自分が骨折したことにしてもらったんです」

「どうやって脅したの?」

子ヤギが訊ねる。アイリーンは口を開いた。

「グリム先生は過去にアイドルグッズを大量に買ってしまい、奥さんと大ゲンカしたことがあります。本人は「もう買っていない」と周りに言っていますが、実はまた大量に買っていたんです」

アイリーンは引き出しの中で見つけたバッチの写真をみんなに見せた。あの後、こっそり撮影したのだ。

「このバッチはグッズを十点以上買うともらえます。このバッチがもらえるシステムになったのは、つい最近です。その証拠に、このバッチに彫ってある年号は……」

「今年のものだ!」

アリスが驚く。

「あなたはこれを偶然見つけて、先生を脅したんです。しかし、先生も誰かに不自然だと気づいてもらうために、あなたの骨折のことは書かなかった」

「ふ〜ん……。たいした推理だね。じゃあ僕はどうやって犯行に及んだの?」

ピーターパンが腕組みをする。

「ペロー先生のボーガンを盗んだのもおそらくあなたでしょう?あなたは空を飛べる。逃走は有利です。ボーガンでシャンデリアを落としたのも、前のドレスを破いたのもあなたです。……黒幕の指示でしょうけど」

「シャンデリアを落としたのは、みんなに恐怖心を植え付け、学園祭を中止に持ち込むため。しかし、みんなが中止にすることはなかった。だから、ドレスを破いた」

「……あのハサミは誰でも使える。僕がやったことにはならない」

「……本当にそう思いますか?」

アイリーンがハサミの写真を見せる。

「これはあの時部屋にあったものです。このハサミ、どこかおかしいと思いませんか?」

「どこって……あっ!」

子ブタが言った。

「これ……僕らが使っているのと刃の合わせ方が逆だ!」

「そう。これは左利き用のハサミ…。この学園には左利き用のハサミも置いてある。ピーターパン、あなたは左利きよね。授業中にノートを取っていないからそうだと思うんだけど…」

ピーターパンはうつむいた。
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